２月２１日（日） 　再びラマ教寺院へ行く。雨もすっかり上がって、時折り雲の切れ間から強い陽射しが降り注ぐ。 　ラマ教寺院には２時間ほどいたが、結局ダライ・ラマに会うことはできなかった。帰りにアッパー・ダラムサラーのバザールをひやかして、バスターミナルの前にある露店のチャイ屋でひと休みする。ここで、一杯のチャイをふたつのグラスに分け合って、すするようにして飲んでいるおやじさんと娘のスナップをカメラに収める。僕の思い通りに撮れていればいいのだが。 　ダラムサラーへやってきた初日、ダウン・ダラムサラーの上手の方にあるうらさびれた楽器屋で、インドの若きアマチュア・ミュージシャン３人が得意気に"サウンド・オブ・サイレンス"を演奏していた。下手くそなドラムと頼りないリズム・ギター、聞くに耐えないリード・ギターとで、それでも一生懸命に演っていた。店内には、埃りにまみれて色褪せたキッスのポスターが貼られていて、僕が店にあったシタールを手にして、我流で弾いてみても誰ひとり見向きもしなかった。若い連中には、シタールを弾けるよりもエレキ・ギターを弾けることの方がずっとカッコいいのかも知れない。 　明日、チベッタン・メディカル・センターへ行き、夕方にはパタンコート行きのバスに乗り込む予定。何か去りがたい思いが胸をよぎる。同じインドの中でもここは、東洋的な静けさを湛えていて、ほっとすることのできる街であった。ダラムサラーは、思い出に残る街になりそうだ。

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