２月１１日（木） 　０：３０、エジプト航空ＭＳ８６３便にて、バンコックに到着。日本時間２：３ ０。 カスタム・チェックを終えて、荷物に座り込んでいると、先程トランジット・カ ウンターの中で見かけた青年が、馴れ馴れしく話しかけてきた。仕事が 終わったらしい。 　聞き取りにくい英語で"日本から来たのか"とか、"何日くらい滞在する んだ"とか、他に名前や仕事の事など、しつこい程問いかけてくる。そし て、僕が聞きもしないのに自分の事について色々としゃべるので、"こい つは、よっぽど日本人が珍しいンだな"と思いながら相槌をうっていると、 やがて"君は友達だ"と言ってきた。僕もつい調子に乗って"イエス、イエ ス"と答えてしまったが、その後に続いた言葉が面白い。"ドー・ユー・ノ ゥ・フォーテン"ときた。僕は最初、なにか数字に関する事を聞かれている のかと思い、何度も"フォーテン"について聞き返してみたら、なんとホテ ルの事であった。ようするに"ホテルとそこまでの足を紹介してやろう"と いう事なのだ。僕とタイ青年が話をしている間、同行のラッキー氏は、ふ たりのドルをタイのお金（バース）にチェンジしに行っていた。結局、僕らは タイ青年について行く事にしたが、ラッキー氏いわく"おそらくこいつは、ツ ーリストを紹介する度に運ちゃんとホテルから、いくらかのマージンをもらっ ているンだぜ"それを聞いて何故タイ青年が僕の事を友達だと言ったの か、やっと理解できた。 　紹介された白タクの運ちゃんと交渉の末、足代１０ドル。助手席にタイ青 年が乗り込み、車は一路バンコク市内へ向けて走り出したが、数分も経 つと少々不安になってきた。初めてやってきた異国の地が夜中だったの と、運ちゃんの人相の悪さも手伝って、"人気のないところへ連れて行か れてピストルでも突きつけられるんじゃないか"とか"何処か途中で仲間が 待ち伏せていて、身ぐるみはがされるンじゃないか"などと思いはつまらな い方へつまらない方へと働いて、"まいったなァ"と車の窓に向かって呟 く。見知らぬ国の最初の夜は恐い。そんな思いとは裏腹に、着いたホテ ルはなかなか立派なもので、ルーム・チャージもツインで２５ドルのところ を、ラッキー氏のねばり強い交渉の末、２０ドルに値切った。僕は"やった ァ"と思い、ラッキー氏は"なにが安いホテルを紹介してやるだ"などとブツ ブツ言っていた。 　僕はひとり２０ドルだと信じていて、それでも安いと 思った。ラッキー氏はふたりで２０ドルと知っていて、 なおかつ不満そうであった。 　外国を旅馴れた者とポッと出の差は、こんなところ にも表れるのだろうか。明日はいよいよインドの地を 踏む。

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